[統合的運動生成概念]
結合組織のつながり

コラムで統合的運動生成概念,今回は,運動器連結の中でも,

結合組織のつながりについて考えてまいります。

筋膜系の緊張による運動軸の形成についてのお話しです。

坐位での重心移動の誘導や四肢の誘導から全身の反応を観察しているときに,

身体内に緊張の糸のようなものを感じたことはないでしょうか?

比較的新しい研究(下の文献①)によれば,

不動に伴う骨格筋の伸張性低下に対する筋線維の関与は否定的に記載されております。

①Udaka.J,et al:Disuse-induced preferential loss of the giant protein titin depresses muscle performance via abnormal sarcometric organization.J Gen Physiol.2008;131:33-41.

これに対し筋膜中のコラーゲンの質的・量的変化により骨格筋の伸張性が低下することが,

骨格筋由来の拘縮メカニズムに強く関与していると推測されています。

拘縮の本態が筋膜であるとすると,

拘縮においては筋膜系の硬化・短縮が発生していることになりますが,

その筋膜は全身を連続的に覆っているために,

ある部分の筋膜の伸張性低下による運動性の低下は,

身体の他部位に牽引力を形成して緊張線をつくることになってしまいます。

緊張線はその線上での軸回転運動を誘発しやすくなり運動パターンに直接的に影響を及ぼすことになります(図6)。

Rolf l:rolfing-The integration of human structures,Santa Monica,1977

筋膜を形成する膠原線維や弾性線維の間は水分に富むゲル状の基質によってうめられています。

不動に伴う拘縮モデルでは,

膠原線維の高密度化および不規則配置,

ヒアルロン酸量増大などにともなう基質の過剰なゲル化などの発生が観察されています。

不動に限らず筋膜の変性の原因には種々の要因があるようです(表1)。

運動生成に関わる我々が忘れてはならないのは,

筋膜系には非常に多くの感覚受容器が存在しており,

筋膜系の緊張は体性感覚入力として中枢神経系にとりこまれるということです。

例えば,

体のどこでもよいので比較的硬度が高い深筋膜レベルまで到達するように拘束してみてください。

このまま状態で並進バランステストを行うと減衰しますが,

これは全身を覆う筋膜系の緊張により体幹の運動が制限されている可能性を否定できません。

しかしながら拘束を一瞬作って解除した後であっても,

並進バランステストは減衰しつづけてしまいます。

このような現象は,筋膜系の緊張変化のみで考察することはできません。

筋膜系を含む身体の結合組織の拘束感覚は中枢神経に入力され,

運動出力系のふるまいを即座に変化させたと考えるのが妥当ではないだろうか(図7)。

結合組織とは?

上皮組織,筋組織,神経組織,結合組織どうしを結合して身体を構築する組織であり,

大部分が中胚葉に由来します。

広義には軟骨・骨・血液も結合組織に含まれますが,

狭義には浅筋膜などの疎性結合組織と深筋膜・靭帯などの密性結合組織に加え,

細網組織,脂肪組織から構成されています。

結合組織はその多くが線維と基質からなる細胞外マトリックスで形成されており,

これに加えて,線維芽細胞や脂肪細胞などの細胞成分も存在します。

細胞外マトリックスにおける線維は同じ太さのピアノ線よりも強靭な膠原線維と,

1.5倍の長さまで伸びることができる弾性線維から構成されています(図8)。

線維と細胞成分の間隙に存在する基質は,

水,グリコサミノグリカン(ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸など),

プロテオグリカン(コア蛋白にグリコサミノグリカンが共有結合したもの),

加えて接着性蛋白(成分同志の結合作用をもつ)からなり粘性をもっています。

この粘性は形態保持や衝撃緩衝に重要ですが,

ゲル化が著明になり粘性が高まると結合組織の柔軟性は低下します。

5)井上貴央・他(監訳):結合組織,最新カラー組織学,p95-111,2007,西村書店

人体は層構造のモデルをしても表現することができます。

図9には下腿の断面図を示してあります。

矢印の方向に①皮膚②浅筋膜③深筋膜④固有の筋上膜に包まれた腓腹筋外側頭⑤固有の筋上膜に包まれたヒラメ筋⑥横筋間中隔⑦固有の筋上膜に包まれた長母趾屈筋⑧腓骨の骨膜といったように何層もの構造をなしています。

このような層の構造は関節をまたぎながら全身をつなげていきます。

層構造をなした分節が運動をおこすためには必ず層間での滑りが必要です。

さらに各筋固有の筋上膜と筋線維の間は水を多く含むぬるぬるとした基底膜が存在しているため,

筋線維と筋上膜間においても摩擦を減じながら層の滑りを担保する仕組みが存在しています。

このような層間の滑りの障害は可動域制限を引き起こす因子となりますが,

術創部の瘢痕などはこの最たる例です。

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