停滞(静止)と運動について

みなさま,おつかれさまです,舟波真一です。

コラムで統合的運動生成概念,本日は「停滞と運動」について考えていきます。

 

生命の基本は停滞せずに振動することです!

COGの鉛直線上にCOPが位置するときは,いわゆる静的姿勢をとっていることになります。

このようなとき身体を上方から観察するとCOGとCOPは一致していることになります。

舟波真一

しかし,生命は波や振動で表すことができる複雑なダイナミクスをもっています。

いのちを受けたその瞬間から,この世を去るまで振動を止めることは出来ません。

呼吸や心臓の拍動などの振動は,COGに対する外乱ともとらえられるため,

たとえ静的姿勢に見えても,COGの動揺を補償するためにCOPは忙しく動き回っています。

COGが右に動揺すればCOPは左に,

COGが前に移動すればCOPは後ろへと先回りして,COGの動揺にブレーキをかけています。

このようにCOPが忙しく動き回る様子は,いわゆる重心動揺計において観察できます。

舟波真一

静止立位をとっているようにみえても,COPが動揺しているのは,

姿勢調整に必要な体性感覚入力を十分にするために理にかなっています。

このように実際には静的姿勢など存在しないので,我々は「姿勢は運動である」と定義しております。

ところで,重心動揺計という名前はおかしいと思いませんか?

重心動揺を本当に計測するのは非常に困難です。

いわゆる重心動揺計とは,COPの移動軌跡をとらえているものです。

ですから,「床反力動揺計」が正式名称ですよね(笑)

高齢者やパーキンソン病などでは安定性限界が減少するために,

重心動揺計でとらえられる外周面積などは減少する傾向があります。

いわゆる重心動揺計の結果は,面積が小さければ小さいほどよいというものではありません。

 

振動から振動へとつむがれる

「姿勢という運動」から「観察することができる運動」へと切り替わるときの,

COGとCOPの振る舞いは興味深いです。

下図には左足から歩き出すときのCOGとCOPの振る舞いを示します。

舟波真一

左足を一歩前に出すという単純な動きのためにもCOPは実に合理的かつ先行的に動いています。

また左足を降り出す前の立位においてもCOPは細かく動いています。

生きている限りCOPは振動から振動へとつむがれます。

COGもCOPほど大きくはありませんが,COPと同じように,振動から振動につむがれつづけることになります。

 

安定性限界とバランス

COGを動かしたり,COGの動きにブレーキをかけるために,COPの動きは大変重要です。

このCOPが実際移動できる範囲を安定性限界といいます。

安定性限界が広い方が,早く大きなCOGの動揺に対しても対応が可能です。

COGを安定性限界内におさめることが「バランス」です。

バランスとは,

①安定性限界の広さ

②COGに対して,COPがタイミングよく回り込むこと

とてもシンプルに表すことが出来ます。バランスを難しく考える必要はありません。

ゆえに,安定性限界は広い方が運動にとって有利となります。

安定性限界は必ずしも支持基底面と一致しません。

バランスを補償し円滑な動作を実現するために,

安定性限界を広げることが治療上必要になります。

たとえば,立位における支持基底面は両足部にまたがります。

しかし,左片麻痺の影響のために左足底で床に対して力を発揮できない場合には,左足からは床反力が立ち上がらないことになります。

このような場合の立位では左足部側において安定性限界が減少しています(下図)。

舟波真一

左に安定性限界が減少しているというのは,

右に身体重心を移動させたり,左に身体重心が動揺するのにブレーキをかけるのが困難になるということです。

ここから考えても,脳卒中後遺症の患者様のバランスの悪さがよく理解できます。

 

停滞と運動

上方から観察したとき,COGに対してCOPが逸脱することで移動が生じるため,

COGとCOPの一致は運動を静止に近い方向に導き,「運動の停滞」を生むともいえます。

歩行時におけるCOGとCOPの振る舞いを下の図に示しました。

舟波真一

COGは片足の支持基底面内に一度も収まることがないことがわかります。

支持基底面内にCOGが収まらない歩行の事を「動歩行」と言います。

両脚支持期のときにのみ支持基底面内にCOGが収まることがあるため,

我々が通常行っている歩行のことを準動歩行といいますが,軽く走っているときは

完全な動歩行となります。

いずれにせよ,

COGとCOPが離れた状態にあるということは,常に重心を移動させようとする力が発生するため,

運動は停滞することなくスムーズな運動生成として観察されます。

これに対して,我々が対象とするクライアントの動作というのはCOGとCOPが一致,

あるいはそれに近づくことが非常に多いです。

通常のリハビリテーションでも,片脚立位のように「体重をかけて,しっかり支えて」ということが少なくありません。

床反力を受けて生成されるすべての動作において,

このような状態の時は運動が停滞し,動作のスムーズさに欠けるのです。

支持基底面内にCOGが入ってしまう歩行の事を,「静歩行」といいます。

脳卒中後遺症の患者様は,とくにこの静歩行をしています。

リハビリテーションでその静歩行を練習してしまうからです。

片脚立位は,動歩行には一度も訪れません。

ステッピングや片脚で体重を支える練習,行っていませんか?

これは静歩行をつくってしまう,悪しきリハビリテーションです。

動歩行は動歩行の感覚を入れ続けるしかありません。

 

BiNI COMPLEX JAPAN 舟波真一でした。


 
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